神の唄 第一章:奄美世あまんゆ

阿摩弥姑アマミコ志仁礼久シニレクの国生み

時代は、人間がこの世に生まれるよりずっと前の古代世界。とある「島」の山頂に、創造の女神アマミコが降り立った。周囲の自然と一体化しつつ、山道をゆっくりと歩き出すアマミコ。

時を同じくして、南洋の果の大岩の頂上で雄たけびをあげ荒ぶる神があった、その神の名は、創造の猿神シニレク。鬱蒼と茂る木々を駆け抜け、川面を蹴り、太古の大滝へと駆け上がってゆく。

山の中腹で偶然出会った、二人の神。そこには透き通るような白い肌にうっすらと赤らめた頬、薄く紅を引いた唇、腰まで伸びた黒髪を風に泳がせるように歩くアマミコと、この美しい女神に心を奪われ、息をのむようにアマミコに見入るシニレクの姿があった。やがて美しい自然の中を連れ添いながら走りだした二人の創造神。二人の距離は縮まり、ついに国産みをするに至る。アマミコとシニレクによって創生される奄美神話を、ダイナミックな映像美で描く。


映画「神の唄」あらすじ

四章から成る奄美のシマ唄の物語を、ノロ役を演じる朝崎郁恵のナレーションと共に、それにまつわる場所での回想シーンにて綴っていく。


第2章「那覇世」 嘉徳なべ加那
現在の瀬戸内町、嘉徳の浜に生を受けたなべ加那。生まれながらにして障害を抱えていたなべ加那は、いっそのこと自ら命を絶ってしまおうと海に身を投げるが、母親の愛を受けて蘇生する。 これからは自分の命を村人たちに捧げようと決意した彼女は、ユタとなり、その霊力を用いて村人たちを次々に救って行くが、そこにとある男性が、難産を迎えている妻と子の命を救って欲しい、と嘆願に訪れる。


第3章「薩摩世」 うらとみとむちゃ加那
加計呂麻島の生間に生まれた美人のうらとみは、薩摩の代官から現地妻になれと要求され、それを拒絶すると、村全体が薩摩から嫌がらせを受ける事態に陥ってしまう。 それに耐えかねた両親は、うらとみを船に乗せて島流しにしてしまう。流れ着いた先の喜界島で国吉という男と出会い、結婚したうらとみは家庭を築くが、 その幸せな生活は村人たちの嫉妬の対象となってしまう。二人にはむちゃ加那と呼ばれる美しい娘が生まれたが、 村中の男性の興味がむちゃ加那に集中したことに嫉妬した村の女性たちは、むちゃ加那を「アオサ摘みに行こう」と、海辺に誘い出すのだった。


第4章「明治維新」 ウォートルスとましゅ
島津斉彬とトーマス・ブレーク・グラバーは、イギリスの耐火煉瓦を用いた白糖工場を奄美大島に建設、奄美の黒糖を高価な白糖へと精製し、 密貿易先の上海で売りさばくという「オオシマ・スキーム(大島計画)」を立ち上げた。グラバーに雇われたアイルランド人建築家のトーマス・ジェームス・ウォートルスは、名瀬のらんかん山に居を構え、 白糖工場の設計に着手するが、そこでましゅという女性に出会い、恋に落ちる。ウォートルスは、ましゅが人目を忍んでやって来れるよう、やんご通りとらんかん山を結ぶ「らんかん橋」を架けるのだが…。


異なった時代に生を受けたこのヒロインたちは、実は一つの魂が輪廻して現れたものであり、その悲劇のヒロインの言葉を、ノロが自らの口を通して物語るという構造を取る。

CAST

ノロ : 朝崎郁恵 (特別出演)

沖縄本島と奄美群島の信仰における公的司祭者としての女神官。琉球王朝が確立するにつれて、奄美における神女組織が整備され、ノロが集落の祭祀組織を統率するようになった。

阿摩弥姑 (アマミコ): 成瀬茉倫

アマンデーに天孫降臨した奄美開闢の女神。男神の志仁礼久(シニレク)と共に奄美大島を作る。古事記におけるアメノウズメや、イザナミであるかのようである。

志仁礼久(シニレク): 山下誠士郎

奄美に天孫降臨した奄美開闢の男神。女神の阿摩弥姑(アマミコ)と共に奄美大島を作る。古事記における猿田彦や、ラーマーヤナにおけるハヌマーン、西遊記における孫悟空であるかのようである。